【第4章:後半】|命をかけた帝王切開、その先にあったもの

我が家の家族史


ナースコールを押して静かに「出血しました」と告げた深夜。
バタバタと駆け寄ってきた看護師たちにより、ベッドごと手術室に運ばれました。
若い夜勤の医師は、カルテを見た瞬間に青ざめ、
「こんなの自分には無理だ!執刀できない!」と泣き出しました。

そんな中、幸い出血は一旦落ち着き。緊急手術ではなく翌朝の帝王切開手術を待つ判断が下されました。                                            理由は簡単。ベストなスタッフメンバーが、ベストなコンディションで挑むため。         一方私はといえば、ナースコールを握らされ。

ナース
ナース

少しでも出血したら、即コール鳴らしてね!すぐ手術するから!

ドキドキしながら眠れない一夜を過ごしました。なぜなら出血すればギャンギャンの命が失われてしまうということ。そして自分もリーリーに会えなくなってしまうことが恐ろしかったのです。


朝、集まった11名のプロフェッショナル

手術当日の朝、私のために総勢11名の医師陣が集結してくれました。
産婦人科医、小児科医、麻酔科医、泌尿器科医――そして手術看護師たち。

主治医
主治医

「病院1番の腕利きを集めましたから!!!」


そう言ってくれた主治医の手は、震えていました。
「こんな大手術は初めてなので……今朝、神社でお参りしてきました!だから絶対大丈夫!!!!」と、主治医は私を励ましてくれました。いや。きっと主治医自身が自分自身を励ましていたでしょう。最近訴訟問題などがありますから。こんな致死率の大きな出産を引き受けてくれて、感謝しかありません。

主治医の指導医も筆頭執刀医として参加。手術前「今回のコレ(帝王切開)を乗り越えられたら、お前(主治医)も歴代に名を残せる!いっちょやったれや〜!」と声をかけているのが聞こえてきました。


最後のお願いと、帝王切開開始

手術は最初は部分麻酔で行われました。

「何かあった時に、顔を見てから……それが、あとで心残りにならないようにね!」
という主治医の指導医の配慮でした。

<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

えーっと。それは私が死ぬ前提のお言葉ですよねぇ?

などと、心の奥底でツッコミつつ。(笑)

部分麻酔後。手術台で横たわる私の顔の横には、ずっと麻酔医が付き添ってくれてました。
時折声をかけ、励まし続けてくれる姿が心強かったです。

至近距離で私のわずかな変化を見逃すまいと、プロのお仕事に感心しました。(ちなみに声掛けも、安心を与えるのはもちろん。私の反応の変化を読み取るためですね)

手術はまず卵管と尿管が位置的に近いので、間違えて切断できないように尿管にワイヤーを泌尿器科の医師が2名で通してくれました。

そこから、いよいよ帝王切開スタートです!


そして、誕生の瞬間

まず先に産まれたのは、三男。
とても小さくて、小さくて。
それでも確かに、私たちのもとに来てくれた、かけがえのない命。「ああ。やっと会えたね」とホッとしました。

続いて、ギャンギャンが誕生。
肺がまだ未熟で、産声はか細かったけれど。
その小さな声が、私に「生きてるよ!ここだよ〜!」と語りかけてくれているようでした。

<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

ああ!生きてる!よかった〜!!!!!


子宮摘出の決断

その後、執刀医が私に問いかけました。

主治医
主治医

子どもちゃんは無事だった!さあ、今度は貴女の番。
子宮、全部摘出してもいいかな?」

私は迷わず答えた。

<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

ハイ。構いません!取っちゃってください!

命を繋ぐための選択。
これまで幾度となく、命の重さと向き合ってきたからこそ。
この決断には迷いがなかった。



そう答えると、主治医が言った。

主治医
主治医

了解!じゃあ、第2ステージ。ここからが本番だ!我々もできる限り頑張るからね!お母さん、子どもに会うために本気出してね?じゃあ次も顔見て話ができるように頑張ろう!

(やっぱり、私死ぬんかい!と心の中でツッコミつつ)

<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

はい!お願いしまーす!


そのまま全身麻酔へと切り替えられました。

次に目が覚めた時、手術室のスタッフたちが口々にこう言った。
「良かった!意識が戻った!生きてますよ!頑張り抜きましたね!」

そして私は、元の産婦人科病棟に運ばれました。
私をわざわざ出迎えてくれた産婦人科病棟の師長が言いました。

「ああ、送り出したときに絶対生きてまた会えるとは思いませんでしたよ!」

……え、それ言っちゃう?絶対つけるんかい!
と心のなかで、またまたツッコミを入れた。

<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

わざわざ、送り出してくれた理由・・・。それだったか。

出血は全部で7リットル。自己血は4リットルすべて使い切っていたそうで。
他人の血をギリギリ使わずに済んだのは、ひとえに私がおデブさんだったから(笑)

幸いだったけれど、しばらくは貧血との闘いでした。

術後は5日間、お腹からは摘出した子宮の空いた場所に血液や体液が貯留しないようにドレーンが出ていて、排出されるようになってました。
もう妊娠・出産はできない体になりましたが、おかげで命は残りました。


三男との対面、そして最初で最後の“おそろい”

出産次の日。亡くなった三男との対面。
小さくて、でも顔は長男やリーリーにそっくりで。思わず夫と「やっぱり兄弟だねぇ」笑いました。

三男には、ギャンギャンと“おそろい”の肌着を着させました。正確には「掛けた」んだけれど。
最初で最後のペアルック。
この時なぜだか写真は撮らなかった。今となっては少しだけ後悔しています。

三男のへその緒はとても細くて、ねじれてました。
主治医は「それが成長できなかった原因の一つかもしれません」と語りました。

主治医
主治医

こんなことをいうのも何だけれど。もし3男くんがちゃんと成長していたら。きっと親子3人、今頃無事で済まなかったと思っています。

今はきっと、長男とおばあちゃん(実母)と一緒にいるんだろうな。
きっと寂しくはないよね。

<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

お母さん。申し訳ないけれど。孫たちのお世話よろしくお願いします〜!


ギャンギャンとの再会、リーリーの帰宅

出産から約3日後、NICUにいるギャンギャンに車椅子で面会にいくことができました。
小さな身体だったけど、健康面はまったく問題なし。
本当に安心しました。

<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

実は出産立会の小児科医は長男の主治医。安心感がありました。

私は産後2週間で退院。ギャンギャンは生後約1ヶ月半で退院。約一ヶ月またまた私は、長男の時と同じく搾乳した母乳を手に毎日面会に通いました。

この当時、リーリーを預けていた児童養護施設の職員さんにこう言われました。

職員
職員

母親の気持ちだけで、リーリーくんを自宅に戻してはいけません。
もし、また体調を崩して2回目の預けが発生したら、
その時こそリーリーくんは“親に裏切られた”と感じてしまいます。
だからこそ、ちゃんと体調と生活が安定してから戻してあげてください

約2ヶ月間寝たきり生活+大手術+新生児のお世話の私は、その言葉を受け
リーリーギャンギャンの誕生からも約3ヶ月半、児童養護施設で過ごすことになりました。


クリスマス、母としての再出発

そして――
クリスマスの日、ようやくリーリーに自宅に戻ってきてもらえました!!!!

母としての再スタート。

<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

よ~し!新生活スターーーート!!!

どっこい、そうは上手くはいきまへん!

怒涛の育児生活、キターーーーー!

が、直後の大晦日にリーリー水ぼうそうを発症。
続いてギャンギャンへ。

さらに2月にすぐにリーリーインフルエンザAに。
もちろんギャンギャンも、私にも感染・・・・。40℃の熱でフラフラで授乳していました。

1番の予想外!!!それは?

リーリーが私に寄り付かなくなったこと!

「お母さん(離れる前はママ呼びだったのに!?)はキライ!」と言って、抱っこはもちろん。手も繋いでもらえず。(トホホホ〜〜)寝るときもリーリーは自分のお気に入りのオモチャで、自分の周りをガード。「コッチに入ってこないでね!」と泣きながら寝ていました。

こんな状態は約2週間続きました。いわゆる「お試し行動」だったように思います。


🔶 お試し行動とは?

相手の愛情や関係性の安定性を確認するために、わざと試すような行動を取ること。

「試し行動」や「試し行為」とも言われ、発達心理学や児童福祉、教育、心理療法の分野でよく使われる概念です。


🔸 具体的な例

状況お試し行動の例
親子関係何度も同じイタズラをして「怒られるかどうか」を確認する
養育施設や里親家庭プレゼントを捨てる/無視することで「本当に自分を好きなのか?」を試す
学校・支援現場わざと先生を困らせる言動をする/嘘をつく/暴れるなど
パートナー関係返信をわざと遅らせる/冷たくする/嫉妬させるような言動

🔸 なぜお試し行動をするの?

  • 安心できる関係を築いた経験が少ない
  • 過去に見捨てられた・裏切られた経験がある
  • 愛情を受け取ることに不安がある
  • 「どうせ自分は嫌われる」と思っている

つまり、「嫌なことをしても見捨てられないか」を確かめているのです。


🔸 関わり方のポイント(対応法)

  1. 反応を大きくしすぎない(冷静に)
    → 怒鳴ったり、説教しすぎると逆効果です。
  2. 一貫性と安心感をもって対応する
    → 毎回同じように対応し、「あなたは大事な存在だよ」と伝え続けること。
  3. 背景にある不安を理解する
    → 行動そのものに注目するより、「なぜそれをするのか」に目を向けましょう。
  4. 行動ではなく存在を肯定する
    →「そんなことしなくても、あなたは愛されてるよ」と伝えることが大切です。

🔸 注意点

「わがまま」「甘え」と誤解されがちですが、本人にとっては命がけのSOSのこともあります。
特に養護施設や支援学校など、愛着に課題のある子どもに多く見られます


📝 最後に一言

お試し行動は、関係性を築く過程で現れる信頼の「確認作業」とも言えます。
相手があなたを信じたくて、でも怖くて、それでも信じてみたいと思っている証拠。

だからこそ、試される側も「揺らがない存在」であることが大事なんです。


<span class="marker-red">なちょぱ</span>
なちょぱ

母として試されてますな〜。リーリー。大丈夫だよ!もうあんなことないからね。

自分が納得するまで、私を試してね。大丈夫って思えるまで。

と、本当は内心では「ぎゃー!つらい!!!!!」と不安を抱きながらも。平静を装いつつ、ジリジリとリーリーとの距離を縮めていったのは今ではいい思い出ですね。

次回からは、「ギャンギャンの自閉症発覚」について綴っていきたいと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

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